第一回:楽譜のあれこれ(調性と実音)
管楽器奏者になった時、ちょっと戸惑いませんでしたか?
「楽器の音(記譜音)」と「実音」に。
そして楽器を学んでいくにつれて「調性」を学び「固定ド」と「移動ド」に悩まされるでしょう。

楽譜は記号の集まりですので、一見すると訳が分かりません。
これは、あるルールにも起因することなんです。
同じ高低差の楽譜でも音程差は違う、という、音階のルールが惑わせる原因です。
ドとミは「ドレミ」と3つの音が関わっています(3度)が、例えば「ミファソ」とは実際の音程差に差異があるんです。
「ド」〜「レ」は全音、すなわち半音2個分、「レ」〜「ミ」も全音です。
「ミ」〜「ファ」は半音ですね。
ですので、「ド」〜「ミ」は半音4つ分、「ミ」〜「ソ」は全音3つ分なんですね。
しかし、楽譜上はどっちの音符も間の広さは変わらない。
この音階ルールがあるために、「固定ド」「移動ド」や「実音」「記譜音」の差が惑わせます。

でも、整理するとそんなに難しくはありません。

楽譜の実際の音符の位置は、「なんの音を出すか」を決めています。
管楽器の方であれば、ルール通り音を出せば、全員が同じ音になります。

そして、これと「固定ド」「移動ド」の差は全く別の話なんです。

今までの「実音」「記譜音」の差は、楽器の主音に関わる話です。
楽器はもともと調律されて製造されています。
サキソフォンはその種類も多いので参考になりますが、例えばアルトサキソフォンは「ド」の指使いを「Es」で調律されています。
ピアノの鍵盤では「ミ♭」を弾きます。
ピアノ、というよりシンセサイザーなどではよくありますが、「キー」を帰る機能があるとわかりやすいです。

鍵盤の配置は変わりませんが、「キー」を変えると同じ鍵盤の「ド」を押しても実際に出てくる音は「ミ♭」だったり「ファ」だったり、そのキーに設定した音が出てきますね。
これはそのまま「記譜音」なんです。
その楽器がそのキーに調律されているということなんです。

楽器を変えて、クラリネットの場合。
クラリネットは「B♭」と「A」のキーで調律されているケースが多いですね。
要は、「B♭」クラリネットをちょっと長くすると「A」クラリネットになる、ということです。
バスクラリネットはB♭クラリネットの2倍の長さに調律されています。今度長さを測ってみて下さい。
これはオクターブの調律差異があるということです。

この「楽器の調律に関するズレ」を楽譜に表現したのが「記譜音」です。
楽譜上には「inB♭」とか「inA」とか「inE♭」などの表記がされているはずです。
これは「あなたの楽器はそのように調律されているので、読み替えが面倒だと思ったのであなたの楽器の「ド」を楽譜の「ド」にしておきましたよ」という、作曲者の親切心なのですね。
ですので、そのまま「ド」を出すと、実際にピアノでは「ミ♭」を出すことになります。
最初から計算されて楽譜に書かれているんです。


ここまでで今回の話の半分です。もう半分いきますね。

今までは楽器の特性の話でした。今度は音楽の特性の話です。
音楽には「調性」というものがあります。
「調性」とは音楽自体の色を決めるものです。
音階を実際の何の音から始めるかという決まり事を「調性」といいます。
ハ長調やイ短調、変ロ長調などがそれで、ハ長調はハの音(C)をドとして演奏します。イ短調はイの音(A)をラとして演奏します。

脱線しますが、先のアルトサキソフォンは楽器の調律はEフラットでした。すなわち「変ホ」です。
ですので、この楽器は「変ホ長調」と「ハ短調」を演奏すると楽器の調律に忠実な演奏ができるということになります。

話を元に戻すと、この「調性」というのを、楽譜の左側にあるシャープやフラットの軍団(調号記号)で表現します。
現代の音楽ルールでは、調性は実音(A=440Hz)を基準に考える「実音主義」になっていますので、実音で表現されることが多いです。
「変ホ長調(Es-dur)(E♭-Major)」や「ト短調(G-moll)(G-minor)」などは、この基準音A=440Hzを基準に書かれています。
この「A=440Hz」が「実音」です。
ピアノは実音に調律されています。(なぜかというと、オクターブ違いの鍵盤は別に作られていて全ての音が違う鍵盤だからです)
ピアノやその他の楽器は、シンセサイザーのように簡単に楽器自体の調性を変更できません。
ピアノは実音Cがドに調律され、クラリネットやトランペットなどはB♭に超律されています。これを簡単に変更することはできません。
ホルンを代表とする主に金管楽器は「バルブシステム」というものを使って管の長さを変えて調律を変更できる構造です。
ですので、基本のバルブ(たいてい開放音/付属バルブを使わずに一番シンプルな管道で音を出す状態)をその楽器の調律としています。

楽器自体の調性とは別に、どの楽器でも共通に音を考えるために実音は存在します。実際、実音自体昔は楽団(教会)ごとに違っていました。ある教会はA=452で演奏していたし、ある教会はA=470で演奏していました。
世界的に同じ音楽を演奏するのに、そもそもの楽器の調律がずれていると大変です。ですので何度かの試みの後にA=440と決められました。
(実はピアノメーカーが決めたんですけどね。これ。)

そしてやっと調性の話の本題です。

実音でどの音をドとしていてもそこから音階を演奏すれば「ドレミファソラシド」と聞こえてきます。
しかし、実際の実音は違います。
これは、音階にルールが有り、そのルールに従うと音階に存在する音が倍音になっているという原理にもとづいて決められたルールなんです。
ドとソはどの音程をドとしても響くのです。
なので、どの音をドとしても音楽は成り立ちます。
ただし、同時に音が鳴っている時に倍音として響かせるためには、同じルールに居る必要があるわけです。
そこで楽譜が登場します。


楽譜は2つのことを同時に表現しています。

一つは「楽器の音」です。
楽譜のドを楽器で演奏するとそのまま他の楽器と音程が合うように工夫されています。
要は「移調」されています。

もう一つは「音楽の音」です。
その音楽をどの調性で演奏させたいかが書かれています。
ですので、ドが移動しています。
ルールに従い、ドが移動した際の半音の過不足をフラットやシャープで補っているわけです。


特に2つ目の「音楽の音」を理解するのが大変です。
楽器の音は、実際に楽器がありますので慣れてきます。
音楽の音はその音楽を演奏しなければならず、フィンガリングなどの「目標」がない分、どのの音を「ド」としているかは楽譜をよく見ないと分かりません。
楽譜にしか書いていないんですから。

であるとすると、「調号記号」が大切になってきます。
フラットは「ファドソレラミシ」の順番でついていきます。これは音階のルールなどに則ってこうなっています。
同様にシャープは「シミラレソドファ」の順番、まさにフラットの逆の順番でついていきます。
この「ファドソレラミシ」「シミラレソドファ」は暗記した方がいいです。
「じゅげむ」より簡単ですし、「イオン化傾向」より短いです。
7つの順番ですから。
シャープは最後のシャープ位置が「シ」になります。
フラットは最後のフラット位置が「ファ」になります。(すなわち最後から一つ前のフラットの位置が「ド」になります)
これで記載されている楽譜の調での調性が確認できます。
そして今度は楽譜の調性を実音に読み替える必要があります。
これで実音での音階上の「移動ド」が実音何の音か確認できます。(調性が判断出来ます)


ついでにもう一つ。

調号記号で調性が判断できないケースもあります。
俗に言われる「臨時転調」です。
本来の調性を変更すると大掛かりになってしまう(頻繁に転調が発生してしまう)ために、臨時で転調を記載する方法です。
これは、「細かい単位で見たら転調しているけど、近親調であったり経過的な調であったりした場合は調号記号で転調しないで臨時記号で転調しておく」方法です。
シャープやフラットが出てきた時に、調号記号で示された調性の、移動ドで音階を読んだ際の何の音に臨時記号がついているかが判断の基準になってきます。
臨時転調の場合はフラットであれば「ファドソレラミシ」の最初の方の音符に付いていることが多いです。
逆にシャープの場合は「シミラレソドファ」の最初の方についています。

順番に辿ってまずは楽器の調性、次に音楽の調性、そして臨時記号。最初は慣れませんが慣れると意外とすんなり分かるようになります。
「わからない」と拒否反応を示しているうちは分かりません。
まずは時間をかけてじっくり読んで、楽譜に書いてみましょう。
演奏するときに本当に役に立ちますよ。


そして最後に。

今まで書いてきた「音名」ですが、色々な国の言葉を使っています。

日本で教えられているものですが。
日本名(ハとかイとか)とドイツ名(BとかEsとか)は実音を表現する文化です。
イタリア名(ドとかファとか)は移動ドの記譜音です。
英語名(CとかE♭とか)はコードを指す場合が多いです。
楽器の調の場合もありますし、移動ドの読み方の場合もあります。
移動ドの場合は調性を先に言うのが一般的です。
実音の場合は「実音で」と言うのが一般的。
楽器の音の場合は「楽器の調で」や「そっちの音で」などと表現します。

これも使い分けが出来ると楽ですね。
どれも一定のルールに則り7つしか種類がありませんので、掛け算九九より簡単です。
是非暗記してしまって下さい。
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