日本の器楽界

日本の器楽界を背負って立つ学生諸氏、日本の器楽界の将来はまだまだ黎明期だ。



音楽を志す者がある種の通過点として崇拝する「音楽大学」。
ここでは日夜音楽界に羽ばたくべく夢を持って集う学生が居る。
しかし、その教育はまだまだ黎明を過ぎていない。

特に器楽科。
私が常日頃懸念していた状況が、現在もなお起こっているようだ。
技術に翻弄され、音楽の心、「歌心」を学べていない学生の多きこと多きこと。
確かに器楽を極めるには相当な鍛錬が必要であり、その技術力の進歩は素晴らしいものがあり、そうした点では日本の器楽界は大きな財産を継承していると思う。

しかし、その「技術」は、一体何のために存在するのだろうか。
楽器を操る事が上手な人間はそこらじゅうに居る。
器楽は何をもたらしてくれる存在なのか。
何をしたくて一生懸命練習しているのだろう。



総てを語ってしまうと多くの問題をはらむので、細かいことは言うまい。
取り敢えず、世界で活躍したい学生は、私の所に来なさい。

そして、素晴らしい音楽を表現したいアマチュア諸氏も、お越し下さい。
彼らより数段音楽を表現する方法を一緒に学んでいきましょう。




日本の音楽界は、未来薄し、だ。
否、もう嘆かむ。
伝えるしかない。
どこに光があるのかを。

トップレベル

楽器を愛し、可能性を引き出すことで、新しい音楽への挑戦が可能になる。
そこにはアマチュア・プロの隔てなく、とても単純でフラットな世界。



先般ご案内致しましたフランク・トゥーネス氏のリサイタルに足を運びました。
曲目は殆どコントラバスでは演奏しないような楽曲。
バイオリン・チェロなどの音域で想定された楽曲ばかり。

実際、コントラバスの指板への圧力は他の弦楽器のそれとは大きく隔てて強い。
単純な音を響かせるにしても、結構な左手の握力を必要とする楽器である。
その楽器でいとも簡単にハイスピードポルタメント&ハンマーを決め、特殊奏法の音程を保ち、プロソリストとしてのコントラバシストとしては現代では当然なのかも知れないが、彼の人間性に少しでも触れた者として、彼から繰り出される確固たる技巧に裏打ちされた表現は、プレイヤーとしての血を煮えたぎらせると共に、大いなる反省と感動を私に残しました。

実際、ここ近年は比較的身近な場所でプロの弦楽器奏者と交流を持たせて頂く事も多いのですが、NHK交響楽団の白井氏から始まり諸氏の崇高なる音楽性と其れを実現すべく鍛えられた技巧は、私を高い音楽の位置に引き上げてくれると共に、まだまだお前ごときでは音楽の「お」の字も判っていないと叱咤され愕然とする敗北感、更にはそうであるからこそまだ先があるという期待感がぐちゃぐちゃに交錯しています。

思えば昨年年始から始まり、セミプロオケの立ち上げ公演、指揮者カンファレンス、第二回オケ公演、偉大なる仲間達、日独楽友協会指揮者講習会、自らの本番、今回の交流練習会と、以前より非常に幅が大きく歩を進めている。
しかし、だからこそまだまだ上が見えない暗雲、苦しくもあり、それが生きている証でもある所以。



妥協無く、愛情がある、そして自らを鍛える、そんな自分でありたい。
そのためにも、自らの勉強。それしかない。

音楽というもの
4/5、多摩センターにお伺いし、「おたまじゃくし音楽教室発表会」を拝聴してきました。

この「おたまじゃくし音楽教室」は、クラリネット金元さんと奥様のピアノ金詠子さんの教室です。
教室の発表会ですので、取り敢えず現在はアマチュア、プロを目指す方、そんな感じで30名の方がご自分の1年間の成果を思い思いに発表されたようです。


金元氏は私の恩人です。
音楽という「私にとっての逃げ」を諫め、目の前にある課題を慈悲深く辛辣に見せつけ、自分が今どうすべきかを、至極具体的で単純な形で、指摘してくれたのはもうかれこれ10年前。
とても心の温かい、まっすぐな方です。

この方のクラリネットももの凄く真っ直ぐ。
pがとても素晴らしく、楽器に対する愛情も拘りも本当に強い。
音楽への思いも、とても人間味が溢れていて、そのために少々辛辣ではあるがそれを凌駕する暖かみですっぽり包んでくれるような音楽。

久々に彼とゆっくり(でもないですが)話せました。
それこそ10年振り。
お互い、「こいつは俺の事よく判ってるんだよ〜」と言い合う位、数少ない言葉で理解出来る方。
彼の苦労も私の苦労も、お互いによく知っていて。
彼の良いところも私の良いところもお互いが良く理解している。
そんな金氏との会話は、10年なんて年月を一気に無にしてしまう。
心穏やかになれ、考えている事が一気に整理される。
彼の今やっている事もすぐに理解出来、それが発表会に脈々と息づいている。

発表会で面白いものを拝見出来ました。

モーツアルトのクラリネット協奏曲kv.622なのですが、この曲は毎日音楽賞の本選に使用される課題。
これを3名の生徒さん(一部違いますが)が各楽章を分担して演奏するという、ある意味「企画モノ」のプログラム。
はてさて、どんな演奏が飛び出すのやら。と、たかをくくっていました。

1楽章は現役を引退してまたクラリネットをやり始めたというセンスの良い初老の方。
え?と思いましたよ。プロでもない、(言い方は失礼ですが)街の音楽教室に通う程度の(これまた失礼)おじいちゃんに、kv.622はきついだろう、と。
また随分酷な事をさせるねぇ。と、内心思っていました。

演奏開始1分で、私は前のめりになりました。
技術はさしおいて、何故こんな演奏が出来るのかと、身を乗り出していました。
そこに居るのは、現役を引退してもなお「自分はこんな人間じゃ!!」と、持てる全ての力を出し切る音。
クラリネットという筆でパルテノン多摩小ホールというカンバスに、縦横無尽に色彩豊かに書き乱れる亡き岡本太郎氏を彷彿とさせる演奏。
正直、ここ数年で聞いた事のない、驚異のクラリネット。

あっけにとられながら1楽章が終わり、次の方。

え????

更にお歳を召した、ご存命の頃の朝比奈氏を彷彿とさせる白髪眉毛。
この人が2楽章????
勿論2楽章でした。
紛れもなく、人生の酸いも甘いも経験した、何でも知っている仙人のような演奏。
カザルスの晩年の演奏のような、勿論1楽章の氏と同じように技術はさしおき、表現の豊かさというか、パワフルと言うか、繊細というか。

「なんだこの発表会は・・・・」

そんな思いでした。

勿論3楽章の方も素晴らしい演奏でしたが、この2楽章の大先輩は、勿論音楽を長年やってきた方ではなく。
その方の演奏は、音楽というより芸術。
本気で素晴らしい演奏でした。
正直、今のプロ演奏家にこんな人が居たら、もっと音楽業界も活性化しているのだろうと思います。
私の中では本日のナンバーワン、いえ、敬意を表します。
来させて頂いて本当に良かったと思いました。


そんな生徒を沢山持たれている金氏のやりたいこと、それは、

「楽しく音楽を演奏する」

事に尽きるのではないか。

アマチュアがあるべき姿であり、年齢や経歴や練習時間など無に帰すだけの人間力で、音楽はこんなに素晴らしいものになる。
ちょっと忘れてしまう事なんです。これは。
私が何故、いつも「技術ではなく、『何がしたいか』なんだ」と言っているか。
言っている本人でさえ、ぼけてしまう事。
それは、「おたまじゃくし音楽教室」に厳然とありました。

また、この方に助けて頂いたのかも知れません。


「反転攻勢」

私の夢は、「日本に真の音楽を生み出す」事。

私と同じように感じている先達は、確かに居ると感じた、幸せな一日でした。
Drum Corp International の薦め
読者は、「Drum Corp International」と言って、聞き覚えのある単語だろうか。
通称「DCI」と称されるこのイベントは、毎年米国で開催されるDrum&BugleCORPの世界的大会である。
日本では片仮名で「ドラムコー」とよく言われているが、要はドラムセクションとビューグル(金管楽器の一種。G調に統一された楽器)の団体である。

内容と言うと単なる演奏ではなく、演奏者自らが動き、身体で表現し、音楽を演奏する。
大きく分けて名前の通りDrumセクションとBugleセクション、鍵盤楽器や大型パーカッションが居る「ピット」セクションがあり、ピットは演奏補助として観客の前、オペラで言う「オーケストラピット」の位置づけである。
それ以外に「カラーガード」(FlugやRifleなどを用い、演奏をせずに演技だけで参加するセクション)があり、とても大がかりな組織になっている。
その大軍団がアメリカンフットボールの会場で縦横無尽に、時には走り込み、コントロールされた動きを一糸乱れず、そして華麗に芸術的に、演技を12分間に渡って繰り広げる。

DCIでは以前よりG調のビューグルのみを出演許可していたが、1999年よりマーチングブラス(B調・F調)の楽器でも参加できるようになった。
それにしても一般的に日本では馴染みの薄いG調に統一された金管楽器軍団の重厚な響きとDrum軍団のシャープな打音、更にピットのオーケストレーションの多彩さという音楽の上で、華麗にフォーメーションを創り上げていく芸術性は、将に「総合芸術」である。

以前より私はマーチングバンドなどを指導してきた経緯もあるが、ある教え子に紹介されて見たビデオ(2000年DCIライブビデオ)でこの魅力に填った。
その教え子(今では友人として仲良くさせて貰っている)もその大会に出演しており、目を凝らして探したのは懐かしい記憶である。
今では私がDCIの映像を入手し、時間を見つけてはじっくり見入っている。

動きも勿論興奮する(アメリカ人そのものの雰囲気も偶には良いものです。)が、其れにもまして正確な演奏とビューグルのサウンド。
音域にとらわれずにビューグルの音色のみで聞こえるサウンドはとても激しく、金管楽器の「パイプオルガン」であり、統一感のあるサウンド。

私が愛するクラシックの中に、ショスタコービッチの交響曲第5番「革命」がある。
特に第一楽章後半のUnisonでのTuttiは、大好きな場面である。
また、同様にベートーベンの第9番第2楽章(先般のエントリでも書かせて頂いた)も、とても好きな楽曲である。
そうした楽曲に共通するのは、「統一感」。
強き統一感に支配される総ての感性を紡ぐ行為は、私の大好きな音楽の方法でもある。
そうした統一感を得るために、DCIに代表されるDrum&BugleCORPの演技を見るのは、大好きなのである。


もし、読者の中にショスタコ5番1楽章やベートーベン第9番2楽章が好きな方が居たら、是非一度DCIのビデををご覧になられることをお勧めする。
その重厚なサウンドと統率されたフォーメーションに、充実した瞬間を感じずには居られないはずである。
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